ありがとう! | 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 489

ありがとう!

私は、特段の無い限り家からオフィスのある赤坂までバスで通っている。
住まいのマンションの前にバス停があり、出勤時にもかかわらず新橋行きのバスは、かならず座れる。意外とバスは、老人にとって危険がある。揺れたり、カーブの路を曲がったりした時など、若い時のように体のバランスが保てない。つり革も動くから電車や地下鉄のよりは老人には難しい。最近の運転手さんは、老人が乗り込むと座るないしポールなどに捕まるまでは、発車させない。ただ、東京では老人に特典がある。75歳を過ぎると勤めたことのない専業主婦は、1年1000円で無料パスが買える。収入のある人でも1年20000円ちょっとで買えるから値段的には、便利な乗り物だ!
だから昼間のバスは、結構老人客が多い。

私の住む町は、子供を育てながら共働きをしているような夫婦が多い。たぶん都か区の戦略が働いているのだろうが、彼らにはとても便利がよさそうで、あちこち廃校する小学校や中学校がニュースに出る中、新しく学校が出来ている。

話を戻せば、私の住まいの前のバス停を通るバスは、東京駅行きや新橋行き、もっと行先も多いバスが停車して行く。聖路加病院、日本橋や京橋、銀座四丁目などバスを選べば行けるから、地下鉄有楽町線より細やかに目的地に行けるのが嬉しい。

朝、バスを使うのは老人ばかりではないのだ。サラリーマンたちも多い。だいたい優先席のひとつや、二つは空いている。
先日、いつもと同じ時間帯にバスに乗った。めずらしく混んでいた。つり革を握る手が並んでいる。今日は立たなければならないか!思いながらふと優先席をみた。子供と共に外人客が座っている。たぶん海沿いに出来た多くのホテルに宿泊する観光客だろう。そのバスは、以前の市場、築地にも停車場があるのだ。親のほうが私に気がついた。すぐに立った。座れと手招きをする。“感動!”混んだ電車などで優先席に座り、スマホや寝たふりをする我が国の若者と違う!この辺の気使いは、日本人の特許だったはずだ!エンジェルスの大谷翔平も、強さと気使いで世界一になった。将棋の藤井七冠も、気使いの人だ。人気は、強い、巧いだけでは、人気者にはなれない。外国の人を馬鹿にしていたわけでは、無い!日本人の気使いに誇りを持っていたし、持っていたいだけだ。

その外国人は、私を見て“お座りください!”と手招きをしている。私は、嬉しくなった!外国の観光客から“どうぞお座りください!”と手招きされたんだもの!私は「有難う!」と言って座った。後ろには、その家族の子供が座っている。「ありがとう」私の言葉に興味を持ったに違いない。その子供を交えて家族何人かで話しだした。ところどころに「arigatou!」の言葉が聞こえる。ありがとう、有難う、辞書を見ると“難”は“わざわい”とか“欠点”“むずかしいこと”“困難”と書かれている。「有難う!」は、むずかしいことを“有り”すなわち“してくれた”という意味なのだ。あの時の外国人家族の方「ありがとう!」