総勢一億浦島太郎化 | 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 422

総勢一億浦島太郎化

大げさなタイトルを付けてしまった!
各都道府県にまん防が出されても、緊急宣言であっても、デルタのコロナよりオミクロンに移り変わった今のほうが、東京の街も寂しくなっているような気がする。

私は、オフィスに出る際にバスを使っている。マンションの前のバス停に新橋行が通るからだ。新橋で、始発の渋谷行きに乗り換えると、虎ノ門、霞が関、溜池山王を通って、バスはオフィスの前で停まる。この1週間、バスの客は以前より少ない。今日などは、オフィスの前で二人降りると客席は、空になった。テレビ番組「ぽつんと一軒家」やお笑い人が活躍する田舎のバスの乗り継ぎ番組のように、客席に誰も乗っていないバスは渋谷方面に向かって走り出した。

地下鉄もそれに近い。私の住む最寄り駅から乗り換え無しで、趣味のドラムが練習できるスタジオまで行けるのだが、ひと車両に数人乗っているだけだ。私は、75歳になってからは、敢えてシルバーシート、そう、優先席に座ることにしている。自分の歳の権利を主張したくてしているのではない。自分は、優先席に座っても良いことになっているが、他の席に座ると、その分若者たちが座れなくなるからだ。が、今やその配慮も必要ないみたいに客席は、がらがらである。

たまに休日に台場方面に買い物に行く!チャイニーズやコーリアンの旅行客用にできたショッピングパークが、がらがらだからだ!老人の自分のためにも、また、一日中来ないお客を待っている店員さんのためにも、運動や散歩のためにも、わざわざ行く!住むマンションの隣に大きなショッピングセンターがあるが、わざわざ“ゆりかもめ”に乗っても行く!隣のモールは、アクセスが良いのか、子供たちの喜ぶ施設があるからか、今でも以前の銀座通りのような込み合い方である。

“ゆりかもめ”は、休日豊洲市場も休みだからか、東京ビッグサイトで何か催事が無い限り空いている。運賃が高いからだろう。コロナ禍の老人の気分転換には、多少運賃が高くても、それが旅だと思えるから良いのだ。ダイバシティーやアクアシティー、イタリアを模したヴィーナスフォートなどショッピングモールが沢山あり、棲家の隣にあるショッピングモールに行くより、安全で楽しい!残念だが、ヴィーナスフォートは、この3月27日で止めると聞いた。しかし、新な遊び場ができた、有明のショッピングモール!温泉もあれば、ホテルもある。映画館もあれば、四季の劇場もある。百均もあれば、イオンのスーパーもある。無印良品もあれば、H&Mもある。そりゃあ、デカいショッピングセンターができたのだ。

老人は、致死率が高い!まっ、いつ死んでも、あの世で長男に逢えると思えば、それも楽しいのだが、わざわざ急ぐこともない。老人仲間と話がはずむと、今日は何曜日だと、誰かが訊く。もう日にちの感覚も薄れてきた。けして、認知症ではない!巣ごもりが2年も続けば、おかしくもなる。祖父菊池寛の書いた『マスク』には、スペイン風邪は、3年で収束をしたと書いてあったと思うのだが・・・。