我が愛しき喫茶店が閉店した! | 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 299

我が愛しき喫茶店が閉店した!

年をとると目覚めるのが早い!定年以前から家人との約束で会社のOBになっても今までのペースを維持することになっていた。ところが、私の勤めは出版社で、それも編集部だった。今時の編集部は知らないが、朝11時を過ぎても編集部がある階は、ガランとしていた。その分夜が遅い!夜中帰宅、午前様は、当たり前で、だからと言って残業代が出るわけではなかった。もちろん仕事があれば、日曜も祭日も連休も出勤した。今の時代だったら、残業代や休日出勤手当が出なければ大きな労働問題になるだろうが、当時は「その分、次の日の出勤時間で適当に調整しろ」という具合だったのだ。もちろん社員もいちいちそんなお金を貰っていたら、すぐに会社が立ちゆかなくなることは知っていた。

出版社は、名前を知られている会社は多いが、所詮は中小企業である。私は、生真面目に11時には出勤していたが、普通の会社は9時頃が始業だろう。「頃」と書いたのは、あまりよく知らないからだ。8時始業かも知れない。だから、朝起きるのも遅い!玄関で靴を履き「行ってきま~す!」と言う時間も10時に近い。こんなサラリーマン生活は、めずらしいことだったと思う。それが今では、8時半に家を出る!一日何も忙しいことなど無いのに、サラリーマン時代より早く出るようになってしまった。同じペースだと、顔を洗い、着替えをし、朝食を喰い、玄関へ行く!行ってきま~す!である。

よく高齢者同士で話をするが、お前は、良いなぁ~!と言われる。行く所があると言う具合だ。私は、そんな時に決まって答える。「東京中の公園は全部しっているよ!どこのトイレが綺麗か、ベンチがあるか否か、ブランコが壊れているか否か。ただ、雨や雪、寒い時期が問題だけどな」もちろん冗談である。

赤坂に使ってくれるオフィスがある。しかし、8時半に家を出るとオフィスに9時過ぎには着いてしまう!朝から若い人たちに老人介護をさせるわけにはいかないと思うことにしている!やはり11時頃にふらっと行くのが、老人の謙虚さ、粋というもので、まだ赦してくれそうだ。その間にどうすれば良いか、8年前に考えた!

歩いて50歩の所にNEWsemという喫茶店がある。まず、私の居心地のいい場所は、煙草が吸える。珈琲が旨くて安い。1時間半でも2時間でも暖かく見守ってくれる。そこで倒れても、静かに救急車を呼んでくれる。同じ歳くらいの喫茶店仲間が出来る。互いに個人情報を詮索しない。本が読める。スマホで音楽が聴ける。喫茶店で働く人たちは、皆女性で優しい人達であることが望ましい。シンプルで、生クリームや果物など付いて無い昔ながらのチョコレートサンデーがある。たったこれだけだが、この条件を満たした喫茶店は、無いに等しい!知っている限り、赤坂溜池山王のANAホテル斜向かいのNEWsemだけである。
だが9月20日に閉店してしまった!いったいこれからと、頭を抱える日々である。