この夏の芥川賞と直木賞 | 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 300

この夏の芥川賞と直木賞

とうとう毎週1回書き続けてきたこのブログも300回になった。5年と8ヶ月になる。
初めの頃は、私なんかが書くエッセイに近い長文のブログを誰が読んでくれているのだろうかと、続けている意味を考えたこともあった。しかし、地方に行っても「あのブログに、こう書いてありましたよねぇ!」なんて、よく言われるようになった。継続は力なのかも知れない。

第161回、これは年に2回の受賞式である。太平洋戦争を跨いでいるから、休みがあったかも知れないが、80年以上続いてきた賞である。芥川龍之介賞と直木三十五賞。両賞とも初めは、新人賞としてスタートした。
資料を読むと昭和10年、1935年からスタートしている。途中、昭和20年から23年まで休んでいた。85年になるのか。今は、少々変更されている部分があるが、初めのころの規定には、芥川賞は「個人賞にして広く各新聞雑誌(同人雑誌を含む)に発表されたる無名若しくは新進作家の創作中最も優秀なるものに呈す」とある。直木賞もほぼ同文だが「無名若しくは新進作家の大衆文藝中最も優秀なるもの」とやや違う。
初期の頃は「芥川、直木賞制定に依る絶好の機会を広く一般文学志望者諸氏の為に公開すべく、規定のもとに純文藝作品、及び大衆文藝を募集する事とした」とある。つまり両賞は同人雑誌掲載の作品だけではなく、応募原稿も対象にふくめるということだった。両賞の生みの親の祖父・菊池寛は『話の屑籠』で「むろん芥川賞、直木賞などは、半分は雑誌の宣伝にやっているのだ。そのことは最初から声明している。しかし、半分は芥川直木と云う相当な文学者の文名を顕彰すると同時に、新進作家の擡頭を助けようと云う公正な気持からやっているのである。」別号に「文学賞の決定は、あくまで公平無私でなければならない。一度でも公明を欠くと、忽ちその賞金の権威が無くなってしまうのである。人間のやることだから、価値判定に過ちはあってもよいが、情実だけは絶対に排斥しなければならない。」と、書いている。

この夏、第161回芥川賞は『むらさきのスカートの女』(小説トリッパー春号)で今村夏子氏が受賞した。彼女は、2010年『あたらしい娘』(のちに『こちらあみ子』に改題)で第26回太宰治賞を受賞し、翌年『こちらあみ子』で三島由紀夫賞を2017年に『星の子』で野間文芸新人賞を受賞している。選考委員を代表して高樹のぶ子氏は「ドトールで自分のいつも座るべき席に他人が座っていた。そしてこの小説を思いついた」と今村氏のエピソードを語った。
第161回直木賞は『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び(うず いもせやまおんなていきん たまむすび)』(文藝春秋)で大島真寿美氏が受賞した。テレビのニュースでもしきりに報道されたが、初めて全ての候補者が女性だった。それを制したのが、この大島氏であった。2014年『あなたの本当の人生は』で直木賞の候補になっていた。