老人と車 | 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

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老人と車

毎日テレビ、新聞、ラジオのニュースで、交通事故のニュースが流れてくる。そこには、かならずと言っていいほどに老人の運転の危うさが報道される。交通事故は、毎日どこかで起こり、ひとつやふたつじゃないだろう。よりによってか、意図的にか知らないが、老人がからむニュースだけがクローズアップされている。ちょっと前までは、こんなことは無かったのだが「人生100年」なんてよく判らないアドバルーンを挙げたものだから、老人は危ないと、老人がやたらにターゲットにされているような気もする。

国会では、今後老人が運転する車は、自動制御装置のついた車に限ろうと議論されていると聞く。コンピュータをそこまで信じているのだろうか。自動とつけば、いまやコンピュータのAI機能のことだが、コンピュータほど繊細な機械は無い。喫茶店で長々と座り込み小型のノートパソコンを使っている若者だって、コンピュータをクッション入りのケースに後生大事に持つ。スマートフォンだってケースに入れたり、画面が割れないようなガラスまたは樹脂のシートを貼っている。しかし、そんなに大事にしていても、パソコンだってスマホだって時が経てば壊れる。車に搭載したコンピュータは、風雨にさらされ、ガタガタ道で極端に揺られて、壊れないわけが無い。そして、いつ壊れても可笑しくないのだし、壊れた瞬間は、誰にも判らないのだ。そこまでコンピュータを信じる訳を知りたい!

さて、私も今年73歳になる。私の友、ドイツ車も16歳になる。私と同様に、私の友も壊れだす。あちこち車好きの爺さんに頼んで診てもらう。治してもらう。1年に数回、その爺さんの手を煩わしている。この車がオシャカになったら、次は無いと決めているから私にとっては極々大切な友だ。
16歳から運転してきた。レースの免許も取ったこともある。しかし、今は昔、他人迷惑かも知れないが、巡行速度を保ち、左車線を保ち、追い越しをせず、教習所通りに走っている。家に置いて使わない時でも、2日に1度エンジンをかけアイドリングをしながら、音を聴く。なぜそれでも車を手放さないかと言えば、私の趣味の音楽の為だ。

楽器は、ドラムだから手では運べない。昔と違って、今は、練習スタジオやライブハウスなどには、ドラムが置いてある。昔は、楽器そのものが日本に少なかった。アルバイトで何処へ行くにもドラムを持って行かなければならなかった。結構、ドラムは細々とした楽器で、ばらばらにするとパーツが多い。手では持って行けず、宅急便も無かった時代。あってもアルバイト代は、それで消えただろう。今でも、お祭りなどではドラムは、持っていかねばならない。
最近、我々のバンドふたつが、合同演奏するようなことが多くなった。ダブルドラムである。ひとりは、そこにあるドラムを使うが、私は自前のドラムを持って行かねばならない。もうちょっと友である車に働いてもらおうか。

 


追伸・読者の皆様へのお知らせ

■講演会
令和元年 7月27日(土曜日)午前11時より
場所:高松市菊池寛記念館ホール
香川県高松市昭和町1-2-20 サンクリスタル3F
お問い合わせ:高松市菊池寛記念館
電話 087-861-4502
詳細は、高松市菊池寛記念館ホームページにて
http://www.city.takamatsu.kagawa.jp/kurashi/kosodate/bunka/kikuchikan/index.html