この歳になっても | 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 289

この歳になっても

もういい歳なんだから、晴れの日の縁側でお茶でもすすって「新緑が綺麗だねぇ、おう、おう紫陽花が見事だよ!おや小鳥が来たよ、メジロかね、それともホオジロかな?」なんて家人にむかって独り言のように言ってもいい歳なのだ。が、むかしの老人と今の老人とは、環境がかなり違う。

マンションには縁側など無い。小さくても自分の庭なぞ無い。メジロもホオジロもどこかには居るだろうが、身近に居るわけではない。働きづめに働いてきた。正月休みも、5月の連休も返上し、土日まで仕事が入っていた。そして、やっと小さなマンションを大きなローンで買い、やっと家族に迷惑をかけない程度の稼ぎで我慢し、ワンコインのランチを続けてきた。

人生100年時代と国は大声で叫んでいる!しかし、人間は、もっと早く死ぬとの計算の中でシステムが造られていた時の人たちが、今の老人である。ひとつまみの人、例えば両親が残してくれた土地にマンションでも建てて、そのあがりで食える人たちは、それで良い。しかし、ほとんどの場合、老後のための貯金をしていたつもりが、死ねないのだから毎月預金をおろすはめになる。会社員の厚生年金でさえ生きていくのに辛いのだから、街場の八百屋さんや魚屋さんたちが入る国民年金では、生活がなりたたないだろう。

サラリーマンは、定年退職があるが、八百屋さんや魚屋さんには無いのだから、死ぬまで働けるはずだ!だから国民年金で良いのだ。と、役人や議員たちは、考える。自分たちには特別な年金制度を作っていて心配が無いから、他人の苦しみが判らないのだろうと思う。八百屋や魚屋さんだって近所に大きなスーパーでも出来ればたちまち廃業を強いられる。サラリーマンや自営業の人たちだって、老後の面倒を見てくれる子供が少ない。今、老人にとって死ぬ不安より生きる不安の方が大きいと思う。

先月だった。ある有望な若手議員が「年寄りも75歳まで働いてもらおう!その収入からも年金を徴収できるもの」と、言っていた。大賛成だ。しかし、ちょっとの不満はある。なぜ75歳で切らねばならないのだろうか?100歳まで、まだ25年もある。ならば75歳になったら免許制にすればいい。働く気持ちがあるか?働ける健康状態にあるか?国が免許を出し、率先して免許を持つ者たちを働かせばいい。75歳から年金は出す。そして、働いた部分から年金を徴収する。年金ばかりでは無い。健康保険料だって、バランスを取ることが出来る。さすがに100歳までは無理かもしれないが、80歳半ばまで、元気に働いている人たちは、沢山いる。働くことが出来ない気力、体力になったら免許を返納させる。

いいじゃん!縁側でお茶をすする代りに仕事を持って、働けるだけ働く!今の日本、働き手が居ないんでしょ?老人は、嫌なの?嫌だって言っている人だって、すぐ老人になるよ!そして、役立つために働きたくなるんだよ!

 


追伸・読者の皆様へのお知らせ

■ラジオ番組
私の祖父・菊池寛の著作『満鉄外史』(原書房刊)がNHKラジオ第2で全40回にわたって朗読されます。タイトルは、朗読「菊池寛~満鉄外史~」です。放送日及び再放送日、番組ホームページ(NHKラジオ第2文化番組)でも聞けます。日時を列挙いたします。お時間のある方は是非に!

放送日:6月3日(月)~7月26日(金)
午前9時45分~10時の15分間
再放送:6月8日(土)~毎週土曜日
午後9時45分~11時(月~金一挙放送)
NHKラジオ第2 文化番組ホームページ
https://www4.nhk.or.jp/roudoku/

 

■講演会
令和元年 7月27日(土曜日)午前11時より
場所:高松市菊池寛記念館ホール
香川県高松市昭和町1-2-20 サンクリスタル3F
お問い合わせ:高松市菊池寛記念館
電話 087-861-4502
詳細は、高松市菊池寛記念館ホームページにて
http://www.city.takamatsu.kagawa.jp/kurashi/kosodate/bunka/kikuchikan/index.html