人生100年時代? | 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 510

人生100年時代?

 “人生100年時代”
 国がこの言葉を打ち出して久しい!
 確かに、日本は“超”が付くほどに寿命が長くなったと思う。いや、訂正しなければいけない。100歳以上の人は、確実に多くなった。テレビ番組で、山の中の一軒家を探し、取材をする番組がある。そこには、ひとりで住んでいる老人が多い。ディレクターがその老人に歳を訊けば、80歳代、90歳代が多いような気がする。
 たまには、夫婦モノもいるが、単身で住んでいる人が多い。動けなくなれば、麓の息子の世話になることになっているが、今のように動けるうちは想い出の詰まった山奥の一軒家で暮らしていたほうがいいと言う。
 近代医学の優れたことは、子供が死ななくなったことだろう!平均すれば、確かに寿命は、他の国よりも長寿であろう。
 しかし、本当であろうか?

 私と同じ年生まれ1946年、昭和21年生まれで、1988年に第99回の芥川龍之介賞を『尋ね人の時間』で受賞、『千の風になって』の作詞でも有名な新井満さんは、2021年の12月に75歳で亡くなった。作年も、1992年に『受け月』で直木三十五賞を受賞、近藤真彦がレコード大賞を受賞した『愚か者』や大ヒットを飛ばした『ギンギラギンにさりげなく』を作詞し、夏目雅子と結婚した作家としても有名であった伊集院静さんは、1950年、昭和25年生まれであった。私より4歳も年下だったが、昨年の11月に亡くなった。73歳であった。
 こうやって仲良く、または可愛がって頂いた作家たちが次々に逝ってしまった。みな70歳代である。一昨年ころから70歳代や80歳をちょっと過ぎた人の訃報が届くようになった。ボクの同級生やボクの年前後の知り合いの訃報もである。国が言っていることだから根拠が無いわけではあるまいが、どうも介護保険や健康保険、年金問題もあって“人生100年時代”という言葉を疑いたくもなる。

 話が横道に逸れるが、老人は高額な貯金があるなんてよく言われる。親の代から財産を受け継げるラッキーな老人ならそれも出来ようが、ほとんどろくに貯蓄などない。離婚したのか、妻に先立たれたかは知らないが、毎年東南アジアの旅をしている老人が仲間にいる。来年は、台湾にまた行く予定らしい。「ボクの歳になるとさ、郵便局の仕分け作業か、建築現場の棒振りのバイトしかないんだよ、台湾に遊びにいく資金稼ぎアルバイトだよ、再来年くらいになると年齢的にもアルバイト先がひとつも無くなるんだ!」
 そんなものさ、貯金があっても税金や介護保険料を差し引くと5万円以下になる国民年金や手取りで18万円もいかない厚生年金では、何か楽しみをするゆとりもない。長生きしたくない、と言うつもりないし、死にたくない、と言うつもりもない。けれど、楽しくなければ、長生きしてもしょうがない。
 きっと、お国の統計は、施設に繋がれて外にも出られない、ただ生きているだけの90歳、100歳の老人も計算に入っているのだと思う!楽しくなければ、長生きしてもしょうがないじゃないか!