車の功罪 | 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 493

車の功罪

いや~ぁ、困ったよ!
喫茶店の奥でサラリーマンが煙草とアイス珈琲を楽しみながら、おしゃべりに夢中!

午後4時には閉店するという、珍しい喫茶店でカラオケやカウンターには酒類が飾ってあるから、きっと夜は夜で別の営業をしているのだろう!私の予定は、日本ペンクラブの会議に5時から出ればいい。ドラムの自己練習をすませて、3時にその店に入った。しまった!ここは、3時45分に店を追い出されると気が付いたが遅かった!追い出された後は、別の店に入ればいいが、出てるお腹に冷コが入り、またもう一軒か! 時間潰しもこれで大変である。

客は、私以外に3人のサラリーマンしかいない!けっこうデカい声だから、否応なく私に聞こえてしまう!
「いや~ぁ、困ったよ、困った、困った」ひとりが本当に困っている顔をしている。
「どうしたんだよ、朝から元気がないからさぁ、ここに連れて来たんだ!困った、困ったじゃわからねぇよ」
ふたりが同時に同じことを言った。
「ニュースに出たんだ、俺の友達が」
「闇バイトする歳でもないだろう!」
「そうじゃないんだ、良いヤツでな、腰は低いし、頭も子供のころからいい!へんなことをするようなヤツじゃないんだ!」
「それじゃ、わかんないよ!誰なんだ、そのお前の友達というのは?」
「レストランをやっているオーナーシェフでさ、昨日バイクを跳ねたらしい!真面目で、普段は絶対に飲酒運転をするようなヤツじゃないんだ。どうしてものお客に誘われて“つい”だったんだろうな」
「それで、バイクの方はどうした?」
「当然、救急搬送で重体、頭も打っているとニュースでは言ってるんだ!もしかしたら、意識不明かもな」
「有名なシェフだったら、自分で市場に行くだろうしな!車無しじゃ、これから店もやっていけないだろうし、な!」
「それどころじゃないんだよ、即逮捕、たぶん飲酒運転だから当分出てこれないだろうな!」
「そうか、一流のシェフだったからニュースにもなったしな、それで何でお前がそんなに困ってるんだ!」
「店出すときに1千万投資してな、返してもらう時だったんだ」後の声は、聞こえなかった!3時45分に困った顔を含めた三人は、店を出て行った。