コロナとスケジュール | 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 456

コロナとスケジュール

皆さまもお困りでしょう!私だけではないことですから!
私は、70歳半ばの現在、自分の意識では仕事らしい仕事はしていないつもりなのです。しかし、貧乏性とでも言うのでしょうか、昔のご隠居さんのように縁側でお茶を飲みつつ「寒椿が綺麗に咲いているねぇ!」とか「今の鳥は何だろうね、綺麗な可愛い鳥だねぇ、おや、声もいいよ!」とか「おっ、柿の実が旨そうだ、納屋にあるふたまたで少しもぎ取ってみるか、まだ、渋いかな」なぞ言えないのです。

普段は、起きて1時間もしない内に家を出ます。長年勤めた出版社を退職する時、昼間どこに行けばいいのだろうと真剣に考えたものです。人にいつもお忙しいでしょうと、訊かれれば、行く所が無いものだから公園で日がな一日ブランコに乗っていますよ、片手にコーラーの缶を持ってね、それこそ東京中の公園という公園は、ブランコさえあれば全て知っています、雨の日が辛いですがね、と冗談を言って誤魔化してきました。

こんな私にも定期的な書き物は別として講演などのご依頼があります。コロナ前までは、結構ありましたね。それも、知らない地の文化館だのお小遣いまで頂いて、これだって仕事とも言えますし、遊びとも言える。この歳になれば、それでいいのだと思うことにしています!

しかし、新宿の小劇場でワハハ本舗の座長と対談した後、直ぐにコロナが流行しだしたのです。パタッ!と言う音が聞こえるような、この音が相応しいような感じで、全てがストップしてしまいました。自分が名誉館長を務める香川高松の菊池寛記念館にも行く用事が無くなってしまいました。

以前にも書きましたが、我々の年齢には後が無いのです。生きていても、新幹線や飛行機に乗って旅をするエネルギーがどこまで続けられるか、わからないのです。ましてや講演なんていつまで出来るのでしょうか!朝食べた食事も喰っていないなんていうことになったら、講演なんて出来ないでしょう。

やっとコロナから経済再生にシフトされ、外ではマスクは不要ですと言われ、さて、少しずつ仕事のご依頼も入ってきた。しかし、テレビのニュースで映る欧米諸国とはやや違う。10月には、香川高松城の藩主だった松平家の前で講演が決まっていましたが、残念ながらストップがかかったのです。仕方なく高松松平のお殿様のご正室で、井伊直弼を父に持つお姫様松平弥千代姫様に、私がお手紙を書く設定に変え、私は行かないことになりました。
弥千代姫は、西暦1846年生まれ、ご健在なら176歳です。人生100年時代と言っても176歳まで、ねぇ、その方にお手紙を書いて、代読して頂きました。

今、決まっているのは11月の半ばに高松で催す下重暁子さんとの対談、1月7日日本ペンクラブが企画監修する茅ヶ崎での『ふるさとと文学~開高健の茅ヶ崎』でのお手伝い、1月25日水曜日19時~20時半の『池波正太郎生誕100年』での講演、また2月に講演会があるか否かです。ニュースでは、なにかコロナが変異したみたいですねぇ、大丈夫かな~ぁ!またストップ?冬のブランコは、寒いですよ!