75歳、後期高齢者| 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 389

75歳、後期高齢者

私は、最近後期高齢者になった。たった75歳の誕生日が来ただけで役所の手続きが面倒である。

50年近くに渡って私の躰の面倒、特に金銭面で安心感を与えてくれた出版健康保険組合から自動的にお国の組織に切り替わる。退職まで勤務し続けた出版社から離れた時は、出版健保で健康保険特例退職被保険証を出してくれた。一枚のプラスティックカードには、有効期限が入っていない。

家人は、扶養者になっているから同じようなカードを支給されていた。どこも健保は同じかも知れないが、年1回の健康診断もここで受けていた。また、インフルエンザのワクチンもここで打ってもらっていた。全てただである。

他人が羨むのは、この健保組合は、軽井沢、箱根、日光、伊東、京都、ハワイに組合員用の利用施設を持っていて、ひとつひとつが小奇麗で、良い場所にある。たぶん朝食、夕食を含めて同じクラスのホテルや旅館の3分の1以下料金で泊まれる。

健全な経営なのだろう!あのリーマンショックでバタバタと健保組合が潰れた時も問題がなかった。むしろ伊東の建物を新しくしたくらいだ。食事は、場所によって違うが、よく利用した京都などは、京料理が出て美味である。量は、若者には少ないかも知れないが、中高年にはちょうどいい。

これが使えなくなると、本当に困る。これから日本の旅が家人との唯一の絆、助け合いの場になるはずのものが知らない間にお国の制度に替わらねばならなくなった。おそるおそる訊いてみると、申請書を出せば、新しく定年退職者等記号・番号をくれて私が死ぬまで使用出来るという!ラッキー!

制限があるものの老人は、なにも混んでいる時に行かなくてもいい。暇を背負って生きているのだから!番号が届いた、3000番台の半ばだ!少ないのに驚いた!知らないで諦める人が多いのかも知れない。

話が旅に逸れたが、面倒なのは家人の健康保険である。後期高齢者になると扶養より個人になる。私の誕生日の日に出版健保から来た「75歳の誕生日まであんたの面倒を50年間も看てあげてたけど、もうお国に看てもらいなさいね!」という書類を持って役所に行かねばならない!

家人は、一旦国民保険に入り、半年先に今度は自分の後期高齢者用健康保険が届くらしい。金銭的問題や個人主義の過剰で面倒臭い制度が出来た。こちらは、いっさい変わっていないし、扶養しているなんて考えてもいない。むしろ後押ししてもらったり、介てもらうことが多い。何だか、生活を共にしてきたが、75歳の壁はふたりを切り裂くように覚えてならない。

突然で申し訳ない!エンジェルスの大谷翔平という男は素晴らしい!ピッチャーとバッターの二刀流で、ベーブルースの再来か!ホームラン数では、大リーグの1位、2位を争い、フアン投票ではダントツの1位、ピッチャーの腕も大したモノらしい。

野球人としての彼も素晴らしいが、日本人古来の礼儀に長けている。試合中にゴミを拾う。フォワボールで、邪魔にならない所にゆっくりバットとプロテクターを置く。記者会見が終わった後、自分の座っていた椅子をちゃんと整える。当たり前の事だが、出来る人は少ない。それも大物になった大谷がやってくれている。日本人の株が上がるというものだ!