3週間| 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 387

3週間

新型コロナウイルスのファイザー製の第1回目のワクチンを接種してから、来週半ばで3週間が経つ。

最初のころは、電話もつながらなかった。スマホやパソコン音痴の私ではアナログしか申し込みが出来ないが、国や地域の若い役人が決めたのだろう、文明の利器のみである。

私には、電話が通じない以上成すすべがなくなる。不安が募る。それも、ひとり分では無い!家人と共にだから、無理かもと半分諦めていた。

そんな所にドラムを教えている女優さんからメールが入った。「師匠、ワクチン接種の予約困っているでしょ?やってあげましょうか?」
救世主が現れたのだ!「私のダンスの師匠に頼まれて、やってみたけど、あれお年寄りには無理!コツが判ったから、やりますよ」
優しい!甘えることにした。

ふたり分の予約を取るため、何だか判らないが言われるままに、右上に書かれた長い番号や西暦での誕生日、また判らない番号、そして住所、氏名、年齢、希望の接種場所等々、ありったけの個人情報を二人分伝えた!一番困るのがパスワードというモノで、普通だったらその場で電源を切ってしまう。この日は、彼女がやってくれるから大船に乗る。

15分くらい待っているとSMSに彼女から「取れました!ふたりの接種日は残念ながら違うけど、同じ日より何か良いと思います。おふたりの接種日予約が取れた表を転送します!」
LINEでふたり分の受付完了の表が送られてきた。その時に、2回目の接種日も予約しておいたのだ。

3週間は、結構長い!モデルナの中4週間は、もっと長く感じると思う!ワクチン接種予約を取ってもらうまで、自力で予約する方法を考えるのに時間を要した。それより以前は、ワクチンと自分に距離があって実感がなかった。

しかし、1回目のワクチンを接種した瞬間、私の生きるという欲望に火が付いたようだ。2回目の接種まで、おとなしくしておかねばならない。もしも、その間にコロナに感染しようものなら、あの努力はどうなるだろうか?

接種日の前日に風邪でもひいて熱でも出たら、どうなってしまうのだろうか?2回目の接種日を待っている間に、もし大停電事故がありワクチンが消えたらどうなってしまうだろうか?大地震や大津波が起きないとも限らない!

私の接種した場所では、ワクチンを5倍に薄めて打ってしまったと、ニュースが報じていた!もし、家人だったら、もし、私がその被害者だったら、どうなってしまうだろうか!2回目のワクチン接種は副反応が出る人がいると聞く!もし、家人が死んだら、料理も洗濯も出来ない自分はどうしたらいいのか?

もし、自分が万が一に当選したら、今まで買い続けてきて一度も当たらなかった宝くじとの相関関係は、いかがなものなのか!とにかく、突如として2回目までは、コロナにかかってはならないし、アクシデントも禁物!

そっと、誰も通らないのを見計らい、コンビニに駆け込む!必需品のみを手にして慌てて出ようとして後ろから「お金を払って下さ~ぃ!このままだと万引きになりますよ~ぅ!」と言われ、「デカい声出すなよ、飛沫感染したらどうする!?」なんて腹の中で思いながら、たった360円くらいなのだから現金で払えばいいのに、お金を触るのが嫌で、クレジットカードを出し、ひんしゅくをかっている!