トラブル| 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 358

トラブル

朝、赤坂のオフィスに入る前に必ず寄る喫茶店がある。その店の80~90%は、常連客で、珈琲を飲みながら煙草が吸えるという今時珍しい店、赤坂インターコンチネンタルホテルの向かいにある。
近所の食事処のマスターたちも自分の店に入る前に立ち寄るという不思議な店で、話している内容もお客の品も頗(すこぶ)る良い。私が赤坂に来るようになってからは、必ず日に1度か2度は顔を出す。以前のオーナーのママさんが腕を壊して今のオーナーに2年前くらいに代わった。
21席の店だが、昼時は満員になる。珈琲の為に来る人は、11時過ぎには、席を立つ。混むのが嫌なのでは無く、ランチをするため来るお客のために席をゆずっているのだ。なにも言わずにお客が暗黙のルールを作り上げているのが、私が、この店を好きな理由でもある。

今日、このブログで何を書こうかを考えるために朝9時過ぎに立ち寄った。マスターが少し暗い顔をして悪そうに「水が出ないんですよ、ビル全体の!昼のランチの用意も出来ないし、洗い物も出来ないんです。トイレも使えないし、アイスコーヒーやアイスラテ、アイスティーで良ければ」と言う。じゃ、アイスラテをと注文をした。マスターは、紙に「ビル全体の水道故障により、本日は営業できません」と書き、店の外の看板に貼った。それからも、どんどんお客が入ってくる。マスターがイチイチわけを伝えているが、お客は静かに「アイスコーヒーでいいよ」と言って、席に座る。

マスターは、もともと喫茶店のコンサルティングをしていた人で、今でも講演に呼ばれて喫茶店経営のノウハウを教えているらしい。何もお客に胡麻をする性格では無いのだが、一度店に入ったお客はリピーターになるようだ。私もその店では古株になった。お客が、挨拶をしてくれる、挨拶を返す。特に深入りするような話はしないが、声を掛け合ったりはする。今日は、店じまいと言っても、あの調子では、マスターも家に帰れないと思う。2階は、ビルのオーナーがやっている歯科で、予約制だから大変だろうと思う。

ビルのように古くなって電気系統なのか、将又(はたまた)水道管の問題、または人的にしたってバルブを間違って閉めてしまったのかは、多少我慢すれば直るものは良い。しかし、アメリカのトランプさんのようなトラブルメーカーは、困った問題だ。トランプさんだってあの巨大なビルを作った人だから、経営者としては凄腕なのかも知れないが、一国の主、大統領になれば腕力だけでは、統治出来ない。正に裸の王様になってしまう。
しかし、国民の半分近くが、あの裸の王様、勝手放題に物事を進める人を支持する輩がいることに驚く!我々世代は、アメリカに憧れたものだ!大きな牛乳瓶に憧れ、芝生の庭にレンガ作りの家に憧れ、大きなガレージに夫婦用の2台の車に憧れた。自由と民主、そして資本主義に憧れたのだ。しかし、今回のトランプさんのやったことをテレビで見ていると、民主主義、資本主義の崩壊を危惧してしまう。
今、各国のトップは利己主義の人達が多いが、まだ日本で生まれたことをこんなに良かったと思ったことは、今までになかった。少なくても、トランプさんの持つ会社には、私は就職したくはない。もちろん英語も出来ず、この歳じゃあねぇ!