祖父・菊池寛のルーツへの旅(その一) | 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

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祖父・菊池寛のルーツへの旅(その一)

偉そうな題名を付けてしまった。
私にもときどき講演のご依頼がくる。期待されている内容のほとんどは「祖父・菊池寛について」である。たまには「編集者とは」とか「小説について」とかのご希望はあるが、ほとんどが祖父の話を求められる。そこで、いろいろな文献を調べていくと、もしかしてだが『三国志』中の「魏書」に着き当たる。この3世紀末に中国で書かれた紀伝体の歴史書の中に日本について書かれた個所がある。学校の歴史の教科書にかならず書かれている『魏志倭人伝』である。

始める前に、読者に言っておかねばならないことがある。これから書いて行こうと思う「祖父のルーツの旅」は、私の私考であり、私の妄想の中の物語である。だから、歴史的事実として間違えであるとの投書はいっさい受け付けるつもりは無い。また、ブログであるから「祖父のルーツ」と関係のないことを書く週も出てくる。それは、お許し願いたい。「祖父のルーツ」の時は、タイトルに今回のように『祖父・菊池寛のルーツへの旅(その●●)』と書いていこうと思っている。これは、私の先祖を覗く旅でもあり、私の息子を私の背に乗せた旅でもある。インチキは、多々あると思う。お許し願いたい。では、『祖父・菊池寛のルーツへの旅物語』の、はじまり~っ!はじまり~っ!

中国では、3世紀末280年ころ中国の呉の滅亡から297年この書の著者陳寿が亡くなったときまで書かれた『三国志』は、正史として重んじられてきた。
『三国志』の中に「倭人伝」というくだりがあったわけではなく、「東夷伝」の中に倭人が出てくる。倭の「わ」は、現在の日本を指すから、日本人の伝記の最初と思われる。3世紀の日本を知る貴重な資料である。
倭の国に女王を拝する都、邪馬台国があったそうな。また、邪馬台国を中心とした国や女王に属さない国もあった。
松本清張氏が小説化した『陸行水行』が『魏志倭人伝』を書いているが……。
「倭人は帯方郡の東南の大海の中に在り」から始まり、韓国を経て南へ、北へ、七千余里で倭の北岸の狗邪韓国に到着、海を千余里渡ると、対馬国に至る。そこから、また、海を南に千余里渡ると一大国に至る。また海を千余里渡ると、未廬国に至る。東南に陸行し、五百里で伊都国に到着する。云々」相当原文を抜粋したが、とにかく中国から韓国、海を渡り対馬に着き、また大海原を渡る。

まぁ、研究者が詳しく書いているから、もっと正確な本を読んだ方が良いし、邪馬台国のあったであろう場所も東大と京大の研究者によって違うから、私は、言及しない。しかし、中国で書かれた『三国志』の中の『魏志倭人伝』には、女王卑弥呼が統治した邪馬台国や、その属国は邪馬台国の北にあった、伊邪国、好古都国、邪馬国を含む20くらいの国があった。邪馬台国連合国のようなものだったかも知れない。また、邪馬台国の南には卑弥呼の属さない狗奴国があり、男子を王とした。その王の名は卑弥弓呼といったらしい。そして、卑弥呼と卑弥弓呼は夫婦だった。王の官に狗古智卑狗がいた。官の名をクコチヒクといった。卑弥呼と卑弥弓呼の間に生まれた子供だったという説を読んだこともある。卑弥呼は、伊都国の出身、結局卑弥呼は180年代に女王に推され、邪馬台国を興して、夫の卑弥弓呼と離別した。

私の夢想では、狗奴国(クナコク)が邪馬台国に属さなかったのは、この為ではなかったかと思っている。とにかくこの2つの国、邪馬台国と狗奴国の仲は悪くなった。そして、卑弥呼は、この狗奴国を倒すために大陸に援軍まで頼んでいる。援軍が到着したころは、すでに卑弥呼は死に、後継者トヨの世界になり狗奴国も邪馬台国の属国になっていたらしい。面白いのは、この中国の文献でほとんどが卑字が使われていることだ。倭人、日本人は、大陸から見ると蛮人だったのだろうか……。

さて、話を祖父・菊池寛のルーツの旅に戻せば、この女王卑弥呼の邪馬台国に抗った国、狗奴国の王卑弥弓呼と卑弥呼の間に生まれ、狗奴国の王の官であった狗古智卑狗の名前である。そう、クコチヒコ、キクチ、菊池に類似してはいないだろうか?これは、あくまでも私の妄想から出来た物語だが、ある説では、狗古智卑狗(クコチヒク)は、菊池彦と理解されていると言われる。狗奴国は、通説では現在の熊本県菊池川の流域にあったと言われる。

現在の菊池川と方保田川に挟まれる一帯に方保田東原(カトウダヒガシバル)遺跡がある。そこでは、銅製品も出土されているし、水田耕作が行われていた跡もある。弥生時代の後期から古墳時代前期の遺跡である。高千穂にさほど遠くはない山鹿市、阿蘇市のあたりに大きな国があったらしい。これらの地で発見された遺跡から、この大きな国が狗奴国だとも考えられる。
三国志の中の『魏志倭人伝』から邪馬台国の南に狗奴国はあった。その狗奴国は、どうやら熊本県の菊池川流域にあったようだ。
現在の熊本県菊池市あたりに狗奴国の王子クコチヒク、菊池彦を源とした一族がいたのだろう。この物語は、私の夢想だけではない。研究者の中に、このような説を唱えるひともいるのだ。

まずは、菊池のルーツは、熊本県にある菊池市及び菊池川流域にいた狗奴国の王、卑弥弓呼と後に邪馬台国の女王になる卑弥呼の間に生まれた王子狗古智卑狗から菊池という名が生まれ、熊本県菊池市あたりに住みついた一族から始めても良いだろうと思う。どうもエラい時代から書き出してしまったようだ。