お詫びと御礼と| 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 137

お詫びと御礼と

先日、集英社主催の「第1回 渡辺淳一文学賞」が始まって、その贈賞式と祝賀パーティーに出席させて頂いた模様を先週のブログに書いた。
それは、とても盛大で、私は新しくなったパレスホテルに入ったことがなかったから、ますます興味を持って出席した。
この「贈賞式という言葉」も目新しい。芥川龍之介賞や直木三十五賞は「賞の贈呈式」と言っている。また「受賞式」と言われていることも多い。特に「受賞式」は、どう書けば的を得るか困ることが多い。賞を与える立場では、「受賞」の言葉を使うが、貰う側の立場で書くと「授賞式」となる。
貰う側の場合、手で受け取るから部首に「手へん」を付けるのだろうとまでは判るが、立場によって漢字が変わるのはどうも使いづらい。なるほど、「賞の贈呈式」と書けば長くなるから、「贈賞式」は、的を得てる感がある。が、こちらにとって聴きなれない、使われていなかった言葉だから、どうも違和感が残る。
これも、第一回だからだろう。これから永く続けば「贈賞式」も定番になり違和感がなくなる気もする。

頭の部分にグチャグチャと書いたが、タイトルに戻る。今回のタイトルに「お詫びと御礼と」と書いたのには理由がある。私は、いい加減な男だからタイトルと中身が乖離している場合が多い。こんなことを書こうと題名を付けるのだが、本文を書いている内に、どんどんと内容が変わってゆく。変わってしまう。書いた後、読まないものだから自分自身が題名と内容が違うのに気が付かない。しかし、今回のブログのタイトルには結構深い意味があるのだ。
このブログを見つけ出し、読んで頂いてる読者の皆様には申し訳ないので、どうぞこのへんで読まれなくても構わない。

実は、この『閉門即是深山』という綜合タイトルを付けて書き出してから本編で137本になる。週に一度律儀に更新しているから2年半書き続けている。が、退職して別の出版社の立ち上げを手伝っていたころから週イチのブログを書いていたから、今では、450本以上を続けて書いてきたことになる。
自分でもどうなることやらと思い、内容が無くならないかしらんと悩み、苦しい場面は幾度もあったが、読んで下さる読者や面白がってくださる奇特な方がいるもので、なんとかやってこれた。私は長い間出版社勤めをしてきたが、書くのが好きでは無い。むしろ苦手で、子供のころから日記などは、三日坊主で、夏休みの宿題の絵日記などは書いた記憶が無い。
編集者は、書ける者との大いなる錯覚があるようで、編集者が書けるならみんな作家になっている。書く才能も無いし、本から離れられないから編集者になっている訳なのだ。
まさか、OBになってから毎週文章を書くなんて考えてもいなかった。

また、現役の最後のころに会社の中にパソコンが普及してきたために、コンピュータの知識もなく、特に機械音痴の私は、ホームページやブログなどは、作れないし、作ろうとも考えなかった。
退職後に勤めた出版社の人たちも錯覚でものを言っていた。
我々がホームページを立ち上げますから、とかブログを載せますからとか、書いてくれればそれでいいんですよと、豚が木に登るようなことを言われ、唆されて、本日に至った。要は、ワープロ機能で書いた原稿を掲載できる人に450回以上渡してきただけである。書いて、渡せば、私の役目はそれで終わる。なんせ、どう掲載されるのか、私自身端末で読むことが出来ないから仕方がない。本だったら、ページを開いて読むことが出来るが、コンピュータは、読む前の知識が多少いるらしい。自分が書いたものを読むために勉強するなんて、ものぐさな私には、考えられない。いや、「お詫び」と「御礼」の話だった。

先日の渡辺淳一文学賞の席上のことだった!
「あのブログ面白かったのに、やめちゃったの?」
「あの連載読んでいたのに、急に無くなっちゃったから、アンタが死んだかと思ったよ!」
出席していた多くの編集者の中にそんなことを言うひとたちがいたのだ。それに舞い上がっていたので、正しいかどうかは、判らないが渡辺さんのお嬢さんからもそう言われたようだ。
「結構、暇つぶしになるぞ!」ロートルの先輩編集者は、以前と同じく口が悪い。「結構、面白いですよ!僕なんて自分のいる業界がこうなんだと思いながら読んでましたよ」言葉に気をつけながら、若い編集者が訴える。
こんなに楽しんでお待ち下さっている方々がおいでになるというのに、探しても検索出来ないとは何か間違っている。読んで頂きたいから書いているのに、直球を思い切り空振りしたのと同じ気持ちだった。社に戻り慌てて「閉門即是深山」と検索したら「讀書随處浄土」と出てきた。これは、漢詩の対の言葉で私のブログのタイトルでは無い。これは私の祖父・菊池寛が好きな漢詩で「ドアを開けると、そこは深い山のような静けさだ。読書はどこでも出来るから、浄土のように幸せである」というような意味なのだろう。

以前、私のようなボンクラで下手っピーが書いたブログを楽しんで読んでいてくださった読者の皆様、この回くらいから検索しやすいように社がしたはずです。今までのこと謹んで「お詫び」申し上げると共に、これを読んでくださいましたこと謹んで「御礼」申し上げます!ついでに続けて読んで頂ければ……。