香川菊池寛賞 | honya.jp

閉門即是深山 71

香川菊池寛賞

毎年菊池寛賞がある。昨年の第62回菊池寛賞でタモリさんや阿川佐和子さんなどが受賞され、新聞紙上を賑やかせた。授賞式は、毎年12月の最初の金曜日にホテル・オークラで催されている。
これは、芥川賞や直木賞を担当している日本文学振興会が開催している賞で、この日本文学振興会は、ほかに松本清張賞、大宅壮一ノンフィクション賞などの文学賞も開催している。

この日本文学振興会の菊池寛賞のほかに、もうひとつ菊池寛賞がある。
菊池寛が生まれた地、香川県の高松市で催される「香川菊池寛賞」である。先日高松市の大西秀人市長からお手紙を頂いた。「第50回香川菊池寛賞の贈呈式について」のご案内である。
もうこの香川菊池寛賞も50年続いてきた。
私は、61歳の年に祖父・菊池寛の遺品を展覧している高松市の菊池寛記念館の名誉館長に就任した。だから、この受賞式にもこれで8年参加している。
市長からの手紙の文面には「郷土の生んだ文壇の大御所 菊池寛を顕彰するとともに、郷土文学の振興を図るため、昭和40年に設けました香川菊池寛賞も50回を迎え、本年度の入選作には、堀川佳さん(丸亀市)の「床頭台」が、また、奨励賞には、三井英美子さん(多度津町)の「槌屋」がそれぞれ受賞作品と決定いたしました。つきましては、贈呈式を次のとおり開催いたしますので、万障~云々」とある。
贈呈式は、高松で2月27日の金曜日にある。
この香川菊池寛賞には、いくつかの後援会社がある。菊池寛が創立した株式会社文藝春秋やNHK高松放送局、四国新聞社、KSB瀬戸内海放送、RNC西日本放送である。
私は、選考委員ではないが、7名の選考委員が選ばれた香川菊池寛賞とその奨励賞は、受賞式の前に送っていただく。

今回の第50回香川菊池寛賞を受賞された堀川佳(ほりかわ けい)さんの作品『床頭台(しょうとうだい)』は、零細企業の木工所の後継者問題をテーマにしたもので、現在の少子化問題や家族問題に通じる。
次点である奨励賞を受賞された三井英美子さんの『槌屋(つちや)』は、奇怪な小説仕立てで、絶えていく家系を描く。どちらも、なかなかの作品だった。
香川菊池寛賞は、新人賞と言ってもいいと思う。
何も、香川県の方ばかりの賞ではないから、どちらに住まわれている方でもチャレンジしてほしい。
応募期間は、毎年7月1日から10月10日までのようだ。
とりあえず応募の問い合わせ先を記しておく。

〒760-0014 香川県高松市一丁目2番20号
菊池寛記念館「香川菊池寛賞係」
℡:087(861)4502

是非、あなたの作品を読ませてほしい。
審査は、一次審査、二次審査とあるらしい。選考委員は、1977年に『榧の木祭り』で第78回芥川賞を受賞された作家の高城修三氏を含め7名である。
祖父菊池寛が作家になろう、なりたいと思った時代は、新人賞もなかった。新聞社が主催する懸賞金公募が主だったから、なかなか地方の出身者にはハードルも高い。また、有名な作家の推薦が必要な時代だったから地方にいる才能が花開くのには難しい時代でもあった。
菊池寛は、自分が作家として飯が食えるようになってから、何とかして地方で作家を望む者にチャンスを作ってあげたかったのだろう。
今日、80年近く続いている芥川龍之介賞も直木三十五賞も、そのような気持ちの表れであったと思う。
香川菊池寛賞のような各地方の新人賞が手を組み、一緒になって大きな賞を作れば、地方で作家を夢見る人々の福音になるのではないか。そうしなければ、地方の文学賞は、地方の文化人を作って終わる。
中央で力を発揮してくれる有能な作家を地方だけに埋もれさせてはならない。と、私は思っている。