本当のプロに| 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 386

本当のプロに

私は、テニスの大坂なおみ選手のファンである。

日米の両国籍を持ち、日本を選んだ。世界のテニスで、なかなか勝てなかった日本人!とても嬉しかった。私は、テニスをテレビで観るのは好きだったが、ウイリアムズ姉妹が登場するまでは女子テニスにあまり興味がなかった。

黒人選手が登場しなかったテニスの世界は、あまりにも英国やアメリカの差別心を反映していた。同じように英国発祥のゴルフ界でも、タイガー・ウッズが出現した。私は彼の幼い時からの努力が好きで、出版社にいたころに彼の本を出したくらいだ。

今回、全仏オープンテニスの時、ツイッターで大坂なおみは、試合後の記者会見のボイコットを表明した。彼女がテニスのプロの世界に入ったきっかけとなった憧れの選手セリーナ・ウイリアムズに彼女が勝利した時、負けたウイリアムズの記者会見を聞いたことも影響したのだろう。

多くの記者からウイリアムズに「そろそろ引退の時期じゃないか?」こんなキツイ質問が飛んだ。あのウイリアムズでも眼に大粒の涙を流し、会見の席を立った。

確かに負けた選手の記者会見は、負けた本人からすればこんな辛いものは無いと思う。特に、グランドスラムに参加出来る選手たちは、激しい練習を乗り越えてきた天才たちなのだ。

ジョコビッチもフェデラーもナダルも格下の選手に負けることがある。それでも彼らは記者会見を受け、自分に勝利した相手を称え、自分が一層強くなる努力を重ねると宣言する。

まっ、どのスポーツのコメントも同じで、自分の負けたことによって「今後の課題が見えた!」と答える。この答えは、優等生の答えで、これを言ってしまえば記者はグーの音も出なくなる。

最初の大坂なおみのツイッターでの発言は、選手たち皆がそう思っているが如く書いている。これが間違っていた。どの選手も負けて心が折れそうな時でも記者会見に出ているのだから。

大坂なおみも自分はうつ状態が続いて悩んでいる。緊張で大きな大会の時「不安を軽減させるためにヘッドフォンを着用する」のもその緊張から逃れるためだ。と、最初から本音を書いていれば、良かったものを!

今、23歳の若さで世界1位を狙える実力のある彼女でも間違いはある。彼女のウエアーには、日清食品のロゴが入っている。そのロゴのために莫大な金額が支払われているだろうことは、充分に想像ができる。

それによって彼女は、お金の心配も無くして遠征もできるし、良いコーチをつけることも出来る。あのロゴは、記者会見によってアップされるのだ。靴やウエアーは、メーカーのロゴによってテニスコート上でも効果がある。強い好きな選手のロゴ入りと同じ商品を買いたいと思うファンも出てくる。しかし、カップラーメンとテニスコートは、繋がらない。

記者会見でそのスポンサーのロゴがアップされない限り、ムダ金になってしまうのだ。時折、彼女はラケットを投げて壊してしまう。野球のバットもそうだが、その選手にベテランの職人が丹精込めて道具を作っている。

ヨネックスは「受け入れられない」とか「今回のような行為は望まない」とコメントをだしながらも丹精を込めて作り続ける。ミスを道具に当たるのは、ファンの子供達にも良くない!大坂さん、本当のプロとして早くコートに戻って来てくれ!