産廃の島にEVと廃車 | honya.jp

産廃の島にEVと廃車

2013年9月17日

teshima

産廃問題を乗り越えようとしている島

この夏、瀬戸内国際芸術祭に行ってきた。瀬戸内海の島々を舞台に、3年に1度開催される現代アートの一大イベントで、おそらく普段は地元の人びとしか使わないフェリーボートが、ちょっと尖った雰囲気の若者などで溢れていた。芸術祭の会場は、たくさんの島にまたがっているのだが、そのなかでも、中心的な会場のひとつが香川県に所属する豊島(てしま)である。ここは、かつて史上最悪とも言われた産廃の不法投棄問題の現場となった島である。投棄された産廃の処理はいまも続いている。

ところで、芸術祭の会場は、それなりの面積を持つ島の各所に点在していて、歩いて回るのはなかなか大変だ。レンタサイクルもあるが、海の上にちょっとした山が立ち上がっているような地形なので、脚力に自信がないとなかなか厳しい。そこで、社会実験として小型の電気自動車のレンタルが行われていた。産廃の不法投棄によって環境破壊を受けてしまったという歴史を背負った島だからこそ、環境配慮なのだ、という思いが伝わってくる。

というわけで借りてみたカワイイEV

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 外観はこんな感じ。電気「自動車」というが、どちらかというと電気スクーターにボディがつきました、という感じのものだった。下のような島の中の細い曲がりくねった道を走るのに向いていると実感した。小さくて軽いので、急な坂道でも身軽にどんどん登っていく。バッテリーもあまり減らない。「実験だからぜひ充電も体験してみて下さい」ということだったので、旅程の半分を過ぎたあたりで充電ステーションに接続してみたが、じゅうぶんな残量があった。

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廃車の前にもうひと仕事

そんな旅程の最後の頃に出会ったのが、下のような軽自動車の「残骸」だった。畑の中に置かれた錆び付いた車体。もう動くことがないだろうということは一目見て分かる状態だ。産廃により傷を負わされた島なのに不法投棄? どうもそうではないらしい。よく注意してみると、島のあちらこちらで、畑の中にこんな感じの車が置かれている。捨てられているわけではなく、ちょっとした倉庫代わりに使われている様子なのだ。この「廃車」も、移動手段としては現役を終えたかも知れないが、役に立っているという意味ではまだ「現役」ということだ。現役が終わったらすぐ捨てるのではなく、第二の用途に活かす。これもまたひとつの「エコ」のあり方なのかも知れない。

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