もの忘れ | 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 441

もの忘れ

私は、今、ウクライナの義勇兵のような恰好をしている。
首からは前側に定期入れというか、よくサラリーマンがオフィスの出入りの証明証などを入れておくカードケースをかけ、肩から斜め掛けにA4くらいのサイズのショルダーと手持ちのバッグ、たまに肩に、もうひとつデニム地の小型バッグ、たまにその上にドラムのスティックとブラシと何冊かの譜面が入ったバッグとドラムのスネア(小太鼓)の円形のバッグを重ね肩から下げる。多い時は、結局肩から4つ重なった袋物を掛けているわけだ。

これには理由がある。もちろん、スネア・スコア・ブラシ等のドラム練習道具やスネアの入ったバッグは、練習の時だけだが、普段でもA4サイズとデニム地の電子煙草入れと、カードケース入れと手持ちのバッグは常に持ち歩く。A4サイズのバッグには、コロナ用の小さな消毒用のアルコール入れと都バス用のシルバーパスや地下鉄用Suicaを別のケースに入れ、面倒臭いので手袋を挟む皮のケースをぶら下げている。さすがに最近では、デニム地の煙草ショルダーバッグは持ち歩かないようにしている。煙草類は、ジャケットのポケットを使う。しかし、これから暑くなると、また必要になるだろう。とにかくヘルメットをかぶればロシア軍から撃たれてしまう恰好なのだ。

以前は、手持ちのバッグだけだった。が、迂闊にもタクシーの中にお金やカード類の入ったバッグを忘れてしまった。降りたのが勤務していた会社だったから、夕方運転手さんが会社の受付に届けてくれて助かった。それを知った息子が「日本だったから良かったんだよ!それに善良な運転手さんだったから返ってきたんだ!これからは、身から離さないようにショルダーにしろよ」私は、息子の言う通りにした。A4くらいのショルダーを肩から下げた。

ある日の休日、銀座に買い物に行った。ついでにと、紳士服屋に立ち寄った。私の体つきは祖父に似て円い。いつも冗談に産月じゃないかと腹をさすられる。好きなジャケットを見つけても試着しないとならない。ジャケットがハンガーにずらっと並んでいる。そばに鏡がある。肩からのバッグをハンガーポールに掛けて、着ている上着を脱ぎ、試着してみた。どうも窮屈だった。自分の上着を着て、自分の車で!あっ、ショルダーを置き忘れた。慌てて戻ったが、私が掛けたままにあった。息子に話したら「どうしようもないね!」と、言われた。最近やはりショルダーをポールに掛けたまま試着して、同じ目に遭ったが、なくなってはいなかった。
息子からは「大切なモノの入っているバッグは、身から離すな!」と言われている。だから、まるで戦場の兵士のようだ!「それじゃ、肩こりません?」よく訊かれる。口には出さないが、腹では「こるに決まってるだろ!」と言う。

話は変わる。先日バンド仲間と音合わせの練習があった。練習新曲4曲の音合わせ。みんな自己練習は、している。曲はビートルズの ”While my guitar gently weeps” 流行った曲だ!ドラム譜がなかったので、YouTubeで楽曲を探した!これだ!難しい!誰かが、ドラムが違うぞと言う!調べたら私が、一生懸命練習していたのは、Santanaがビートルズの原曲をカヴァーして弾いていた曲だった!