老人には色々と難し過ぎる| 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 382

老人には色々と難し過ぎる

4月の終わりの頃、65歳以上のための新型コロナワクチン接種の案内書と申請方法が区より届いた。

家人と共に、待ちに待った書類である。テレビのニュースや新聞では、やはり罹れば老人は死ぬ確率が高い。だから長い間巣籠り状態が続いている。不要不急やスティホーム、県跨ぎ禁止令と守りたいが守るのは容易ではない。

巣籠りを2週間でもすれば、筋肉が落ちる。3日に一回の買い出しにせよとの言葉もキツイ!そんなに危険がスグそばまで迫っているのかと言われると、運動不足のための散歩もしにくい!

昔、40歳の頃、2週間近く入院をしたことを思い出すと、ぞっとする。私は、中学生、高校時代と陸上部の短距離の選手だったから太腿が40代でも太かったし、脹脛も力こぶが出来た。それが、2週間の入院だけでゴボウのような足になってしまった。

足は、第二の心臓と言われる。血液の循環が悪くなれば、血管の中に澱も溜まる。この澱が曲者で、特に心臓や脳に詰まれば、偉いこっちゃになってしまう。心不全や脳卒中の原因になるのだ!

医学の知識は私には無いが、普通に考えてもホースに水垢が詰まるようなもの。それも、何十年も使っているホースだと、いざ使う時に、曲げてしまっている場所が潰れていたりする。そこに澱が詰まれば一巻の終わりになる。若いうちは、血管も意気が良いが、70年も使えば血管であろうが、ホースであろうが、もうボロボロになるのは、当たり前だろう!

スティホームや人と会うのを避けることは、新型コロナウイルスやその変異型には有効だろうが、動かぬリスクもある。日に何百人、何千人という感染者が出るし、この敵に1万人以上も日本の民が殺されたわけだから「もう家に居るのが飽きたから」とか「みんなで遊びたいから」とか、はたまた「みんなで楽しく酒を呑みたいから」とか、する勇気もない!

スティホームも危ないし、外に出るのも危ない!全てが危ないのは、私が生まれる1~2年前の太平洋戦争と同じではないか!

さて、やっと待っていた65歳以上のためのワクチン接種の申請書が届いたのだが、これが老人には、やたらと難しい!パソコンからか、スマホからか、電話からでも出来るのだが、電話は通じ難いし、ネット予約はパソコンに精通した老人しか出来ないのではないだろうか?

75歳以上の老人は、若い時に携帯も無ければ、Faxも無かった。会社が、Faxを導入した時は、ワンフロアーに1台、それも小さな応接室を潰してFaxを置いた。Faxが、元応接間に鎮座ましましたわけだ。

最初に導入された時、編集部の誰かが、作家に送るようにと、何枚かの直した原稿を女性編集者に頼んだのだが、部屋に入ったきりなかなか出て来ない。頼んだ先輩から、見てこいと言われFaxの部屋を覗くと彼女が困った顔で「1枚目を何度入れても出てきちゃうんです!」という。

たぶん彼女は、紙が先方に届くのだと思ったのに違いない!先輩のところに作家から電話がかかってきた。「おい、何やってるんだ!1枚目が何枚も届いたぞ!」と。

さて、ワクチンは、指定された所に行っての団体接種だ。近くの医院ではない!区の地図の中に6ケ所の施設があるが、どこも最寄りの駅から歩いて10分程。よれよれの老人が、たどり着けるか!