免許更新| 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 334

免許更新

私の自動車免許には、歴史がある。
13歳くらいの時に原動機自転車(今のミニバイク)、16歳の時に軽自動車、そして18歳の時に普通自動車免許を取得したから、大型のバイクを運転することが出来る。出来ても、バイクに乗ったことは無いのだが、苦労して大型バイクの免許を取得しようとしている人を見ると見せびらかしたくなる。だから、免許証を取得してから61年目になるのだ。鑑定団に見せれば高値がつくかも知れない。

今年3月に警察から免許更新の1回目のハガキが届いた。
老人の事故が多発して以来、老人の更新の手続きがやや面倒になった。話には聞いていたが、まず指定された自動車教習所に行かねばならない。何をするんだろうか?なんとなく怖い気もするが、暇な老人にとってワクワクもする。これも聞いた話だが、自動車教習所の老人係は忙しく、なかなか予約がとれないらしい。
ハガキの裏を見ると、びっしりと都内の教習所の連絡先が並んでいる。私は、話を聞いていたから、もしハガキが来たらバスで5~6停留所にある教習所に行こうと決めていた。教習所一覧には、その教習所の名前があった。すぐに電話をかけた。
「今からで1番早い日は、4月1日の水曜日になります」可愛い声で答えが帰ってきた。思っていたより、早いのだ。ワクワクしながら、バスに揺られ教習所に向かった。時間通り9時45分に教習室に案内された。4名だけだった。

教習室には、何台かゲームセンターで見かけるような画面と運転席が付いた機械が並ぶ。これでやるのかなと思いきや、教官は、事故ばかり扱ったビデオを見せた後、適正検査をするからと言い、別の機械に座らせられた。画面を見て、ボタンを押すようなものだ。
「わっ、Aですね!これもA、これもAだ!おしい!残念だな~ぁ!B」私は、判らないままに機械に向かって、教官に言われた通りに動かしていたのだが、なかなかのモノだったらしい。「さて、最後に教習車に乗って実際に運転して頂きましょう!コロナの件もありますから、普通ですと、皆さん一緒に乗って頂きますが、今日は、おひとりずつ乗って頂きます」名前を呼ばれた順は、私が最後だった。

老人になると、更新は、今までのように5年に1回が、3年に1回になる。この講習費用は、5100円だ。老人には、運転させないぞ!をありありと感じさせる。皆が走るコースが同じだと判った。S字やクランク、駐車などは、普段運転している者にとっては、さほど難しいわけではない。が、結構脱輪している。私が見ていたのは、試験コースにある標識だった。特に一時停止の標識には、注意して覚えておかねばならない。ここが、キモである。60年近く前の免許の試験で、注意しなければならない部分、左右確認、ハンドルは、ハの字形に持つ、等々思い出しながら見ていた。この教習は、落とすことが無い。でも、教官に74歳だって、と良い所を見せたかった。

教習所から教習終了証を貰った。6ヵ月有効だとも聞いた。6月の後半が、私の誕生日である。ひと月くらい前に最終的なハガキが、交通局から来るはずである。しかし、あの憎っくきコロナのせいで、どうなるのだろうか?教習所は、みな休み。今の免許で7月までOKと聞いたが、なんとなく嫌だ!