想定外| 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 322

想定外

神戸の大地震もそうでした!東北太平洋岸の大津波や原発事故の時もそうでした。役所や政府は「想定外の」としきりに言っていましたね。マスコミまでが「想定外」という言葉をしきりに使っていました。
はたして、そうだったのでしょうか?

「想定外」という言葉は、アメリカで起きたツインタワービルに2機の旅客機が、ハイジャックされて飛び込んだ時に使う言葉のように思うのです。人間が多くの人間の命を一瞬にして奪うなんて、あり得ても考えたくないことですよね。そんなときに「想定外」という言葉を使っても許されると思うのです。

人間は動物ですが、他の動物とちょっと違うのは、想像力があって物語を造られるからです。だから、他の動物に恐れられ、人間は、動物の中で一番偉いんだという顔をしていられるのでしょう。その証が、物語を造れること、それによって、音楽や絵画、演劇、映画、いわゆる芸術と言われるものを創造することが人間の証だと私は思っています。

神戸の地震も、地震国である以上想像の中にあったはずです。大津波だって物語を作れば、かならず思い浮かぶはずです。原発の事故なんて思い浮かばない方が、変ではないでしょうか?
ならば、何故に物語を造らなかったのでしょうか?それはお金がかかるからです。なるかも知れないと言うだけで起こるか、起こらないか判らぬことにお金をかけたくなかっただけでしょう。役人は、役人で変なことを言えば昇進に響く、政治家は、政治家で金を使うなら「桜を観る会」のようなことで点をとりたい。だから、全て折衷案で進められてきたわけです。その言い訳が「想定外の」という言葉なのです。

日本国憲法の条文の大切な文言、いえ、志は、「国民の生命及び財産を国が守る」と謳っていること、そして「言論の自由」と「法の下の平等」だと思います。ひとつだけ足せれば、私は「永久の戦争放棄」を入れます。今回の新型コロナウイルスも憲法に定める「国民の生命及び財産を国が守る」に当てはめれば、安直には「想定外の」ことが起きたから、水際対策が打ち破られたとは決して言えないでしょうね。きちっとしたマニュアルも出来ていなかったように見えます。憲法の最初の方に書かれている重要な問題に対し後手にまわるような政治で、わが国が先進国だと自負出来るでしょうか?
一生懸命努力しているのは判りますが、後手に回るという点でお粗末と言えるのではないでしょうかね。