ザリガニの会 | 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 318

ザリガニの会

「ザリガニの会」といっても、皆でザリガニを獲って喰おうという会ではありません。ザリガニは、アメリカのニューオリンズのシンボルマークで30年近く前に雑誌関係の人達と研修旅行と称して、会社に全~んぶお金を負担させてアメリカ中を旅した悪い連中の表向きの呼称なのです。その当時、文藝春秋の社長をしていた田中健吾は、その悪~い仲間たちに向かって「研修の称しているが、皆で仲良く楽しんでいらっしゃい!一緒に旅をすれば各社の横の繋がりにもなるんだから、楽しく遊んで来りゃ良いんですよ!人生の何かの役にたてば良いのさ!」と言ったらしいが、私だけは、その話を忘れている。

ニューヨークに着き、今は無くなってしまった高いツインのビルを観て、直ぐにジャズの殿堂ブルーノートに飛んで行き、しこたま飲んでホテルへの帰りは千鳥足になった16人と+1名の旅の始まりだった。その1名が私で、千鳥足にならなかった原因は、ただの下戸だからである。20日間くらいの珍道中だった。17人もいて、誰も英語が出来なかったからだ。出発の成田の空港から、家のテーブルに旅で忘れてはならじと財布、パスポート、その他海外旅行に必要な物を前夜から揃えて置き、全て置き忘れてしまった者、奥さんがタクシー飛ばして来てくれたからいいもののタクシー代は大変だったろうと私などは心配してしまうが、サンフランシスコで首からカメラをぶらさげて歩き、強盗に出会い首までも持って行かれそうになった者、ワシントンでジャンキーに絡まれているにもかかわらず英語が解らないので1時間近くも話相手になってやって、金目当てのジャンキーが呆れて立ち去ったと豪語する者、アメリカ国内の空港で外に出て荷物を忘れたのを思い出し、皆で戻ると、ただひとつのトランクがくるくる廻っていて、係り官から叱られた者、高所恐怖症とは自分も気づかず43階のホテルの部屋で一睡も出来なかった者、ポールダンサーの胸に1ドル紙幣しかチップを挟まずダンサーから日本語で「ケチ!」と言われた者、紙面枚数上これ以上は書けないが、人生の落伍者16人+1名の旅だった。

ニューオリンズだけは、ま~ぁ、無事だった。何年か前にミシシッピーの大きな氾濫があり、街全体が壊滅したが、その以前、我々が行く前にも小さな氾濫があった。当時そのことを思い出したひとりが、皆で寄付をしよう、区役所くらいあるだろう!なんて真剣に言いだすものだから、誰が英語を使えるんだ?区役所なんかニューオリンズにあるのか?寄付なら俺にしてくれ土産物を買いすぎてスッカラカンだ!多少もめたが、取り止めになって治まった。夜、私が行く沢山のジャズクラブに金魚のフンみたいに着いてきた。ひとりのつもりが、1名+16人の大人数になっていた。

30年が経った。悪ガキども、ひとり逝き、またひとり逝きとなったが、ザリガニの会の集いは健在で、年に2回している。