名言「清き一票」と「忖度」 | 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 226

名言「清き一票」と「忖度」

「忖度」とは、岩波書店発行の『広辞苑第四版』には「他人の心中をおしはかること。推察」とある。
オリンピックやパラリンピックも終わり、テレビがちょっとつまらなく感じだしてきたころ、官僚の「書き換え問題」が浮上した。不謹慎かも知れないが、面白い。あんなに「文書は、これっきゃ無い」「他に無い」「答えられない」と言っていたのに、あれっ!と言う間に急転直下「ありました!ありました!部下のコンピュータの個人ファイルに書き換えた文書が、ありました!これです、どうぞ!」と言いだした。政界と官僚を巻き込んだ黒い霧である。松本清張さんが書くような物語なのだ。

私が現役の編集者でいたころ、清張さんの担当をしていた。どんな話で小説を書いていただくか、担当者は、考えなくてはならない。かなり頭を使ったものだ。若いころの清張さんだったら、書きたいものが、どんどん湧いて出て来たろうが、年を取るとそうもいかないのだろう。
「きみ、スワッピングって知っているかね?」と言われた時、さすがの私も仰天した。「調べてみます」私は答えて、それらしき雑誌を買い集め、発行する出版社を取材した。私の机の周りは、その手の雑誌の山が出来た。同じ編集部の先輩などは、清張さんの取材と知っているのにニヤニヤしながら「へぇ、君がね、そんな趣味を持っていたんだ」など言いながら、からかいに来た。やっと取材を終えて、資料を揃えて、10日後に松本宅に電話をした。
「あの~、先生、全部そろえましたが…」
「きみ、何だったか、忘れたよ!」清張さんが、本当に忘れたのか、私をからかったのか、聞き忘れてしまった。私が、忖度したのでは決して無い。
松本清張さんが今、ご存命なら喜んで『小説 学園事件』『平成・日本の黒い霧』として書くのではないかと思うと、清張さんが故人になられたのがとても残念である。

話が逸れたが、前の選挙の時に、結構若者たちに人気の政党は自民党だった。聞けば、多くの若者が自由民主党と書いたと答えていた。好きな政党に“清き一票”を入れることを反対することは出来ないが、好きだからこそ“変なこと”をさせないために国民が手綱を持つことが大切ではなかろうか?大量に票を貰えば、安心する。権力者にとって危なくない権力を持てるからだ。権力を持つ者を安心させてはならない。“清き一票”とは、そのための言葉だ。国民の手で手綱を持つという意志の表示なのである。人間は、権力を持つと人が変わってしまうものだから、権力を集中出来ないようにしなけりゃいけない。いろいろな国々が独裁国家になる中、我々だけでも自由で、民主的な世界を守りたい!