鬼人| 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 182

鬼人

私の背中に今、鬼がいる。
Kさんという鬼で、いつもは大阪にいるはずなのだが、私が働かないのに業を煮やしてわざわざ来たのかもしれない。私の仕事をしている席の後ろで私がちゃんとブログを書いているか、否かを監視カメラよろしく見ているのである。

当然私はKさんが席を立ったり、誰かと話したりしている隙をみてYoutubeから曲を取りだしSONYのWALKMANに入力するのだが、曲が4分以上のものだから、すぐに戻ってきてしまう。この曲は、7月8日の土曜日の横浜の関内でのライブでやる新曲のひとつだから、どうしても録音して覚えなければならない。しかし、4分は長い。途中でかならず帰ってくるから、そのたびに画面をワードに変え、さも原稿を書いているようにせねばならない。そのたびに初めから録音をやり直すわけだから1曲取り込むのに1時間以上かかってしまった。頭は、録音の方を向いているからブログの原稿が進むわけがない。ほとんど何もしないで時間だけが過ぎてしまう。しかし、私にも意地がある。なんの意地だか判らないが、鬼を背にして原稿以外をする快感を持つ、その続行の意地かも知れない。

書き手にとって編集者は「鬼」である。編集の仕事や者が「鬼」ではない。締め切りが「鬼」なのだ。何も書くことを思いつかなくても、1度「イエス」と言ってしまえば契約は成立し、締め切りが出来、何が何でも納めなければならない。私も現役の編集者をしていたときには「鬼」と言われていた。先日、高松から同人誌『あらら8号』が届いた。一昨年秋に依頼されたものだが、扉の頁と本文である。文字数や頁数は、決まりがなかった。私は、作家では無い。終身編集者だと思っているが、出版社を退職してから何冊か出版しているから、日本文芸家協会から入会のお誘いがきて、入会した。だから、作家と言えなくもない。中途半端な作家である。以前より同人誌に私は興味がない。何か自分よがりなところがあるからだろう。しかし、祖父の郷里高松からのご依頼を受け流すことは出来ない。今年も高松市菊池寛記念館発行の『文藝もず』に書いた。『あらら8号』は、依頼を受けて直ぐに書いた。昨年の正月明けには、扉の頁と本文「ショートショート小説」を2本書いたのだ。編集者を待たすのが嫌いで、また内容にクレームがあったとき直す時間が欲しい。こんなに早く書き、渡すのは、きっと自信の無さの表れだろう。
『あらら』は、発行者水口道子さんの香川県三豊市詫間町松崎2780-379に連絡すれば買えると思う。定価500円と送料はかかると思うが、興味をお持ちの殊勝な方は、どうぞ!