島崎藤村 | 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

閉門即是深山 167

島崎藤村

この正月明け、すぐの時であった。
私は、江戸川橋のスタジオを借りてドラムのひとり練習を終え、永田町で地下鉄有楽町線から南北線に乗り換えた。白金台に行くためである。前日に息子に頼み、目的地 明治学院大学への行き方を調べてもらっていた。
息子の話では、南北線を使っての大学への行き方にふたつの方法があるという。白金台で降りるか、次の駅白金高輪で降りるかだが、どちらも駅より7分と同じらしい。白金台は、八芳園という目印がある。私は、白金台で降りることに決めた。大学の廻りには、時間を調整する喫茶店の姿が見えない。あるのは、コンビニが一軒だけ。トイレを借り、返しに缶コーヒーを買い、小さなカウンターで飲み、不思議にも用意されていた小さな喫煙所で煙草を吸い時間を潰した。窓の向かいに見えるのが明治学院大学である。この大学は、ヘボン式ローマ字で有名なアメリカ人ヘボンが安政時代に宣教師として来日し、キリスト教プロテスタントを基礎として日本人に英語を教える目的で明治に造ったもので、現在の白金校舎のある地は、創立当初の全寮制時に寮があった所であったらしい。この大学の一回生に島崎藤村はいた。本名島崎春樹、信州木曾の中山道馬籠の生まれである。ロマン主義の詩人として『若菜集』を自費出版し、小説家に転じて『破戒』や『夜明け前』、『春』、『家』などの長篇を世に出している。

一昨年、私の所属する日本ペンクラブの企画「ふる里と文学」の一回目を信州小諸で行なった。小諸には、島崎藤村の記念館がある。大学からのご要望で、学生や一般人のために、今回藤村の出身大学で同じイベントを催すことになった。私は、その手伝いである。プログラムは、講談師 神田松鯉さんの語りを入れた「夜明けを開く~島崎藤村の人・作品・世界」と題した映像と「藤村を語る」と題した浅田次郎氏の講演、「藤村の家族」と題した下重暁子氏の講演である。おふたりは、現日本ペンクラブの会長と副会長で島崎藤村は、第一代目会長である。浅田さんと下重さんの話を聞いていて、私は「ふっ!」と思ったことがある。おふたりの話の中に藤村の小説の出だしの上手さが出た。長篇小説『夜明け前』の出だし「木曾路はすべて山の中である。」。また『破戒』の出だし「蓮華寺は下宿を兼ねた。」は、まさに「詩」であると。浅田さんは、日本の小説は、いかに簡潔に表現できるかであり、日本文学は「詩」を基礎としている。詩人と小説家を兼ねたひとは、藤村以外室生犀星ぐらいしか思い出せないと説く。そうだ、このブログも長すぎる!「ふっ!」と思う。本年から半分に文字を減らそう。「名も知らぬ遠い島より 流れ寄る椰子の実一つ」藤村の詩。