蜥蜴の尻尾 | honya.jp

閉門即是深山 30

蜥蜴の尻尾

猪瀬直樹元東京都知事は、徳州会からの金で責任をとって辞任した。また、みんなの党の渡辺喜美代表は、化粧品大手のDHCからの多額の金で責任をとって代表から退いた。選挙には金がかかる。ふたりの問題が、選挙資金だったのか個人的借金だったのかはっきりしない。選挙資金だったとしたら、記載、公表しなければ法律違反となろう。法を作る側が法を犯すわけにはいかないから、許せないのは判る。が、人間として思うに、おふたりとも潔い。
東京電力の○○さんにしても、NHKの○○さんのように潔さの無いひとたちがこのごろ多くなったような気がする。
「そして、貴方は辞任はしないのですか?」という記者からの質問に対して
「機構を改革して、このようなことが二度と起きないようにするのが自分の責務と思っております。辞任する気は御座いません」という返事が定番のようになっている。スポーツ界も交通の世界でも、確か銀行業界でもだ。
大きい話でも、小さな個人的な話でも、責任をとらない人が多くなっているように感じる。
大人になりきれない、子供のままの大人が何と多くなったのだろうか。カッコ悪い日本になったものだなぁ!そのような人たちは、いちように自分の責任を他人に押し付ける。他人のせいだけにする。最初は、内々に私たちも責任をとるからと言っておきながら。なにか、宝くじのコマーシャルのように。

STAP細胞論文の「どんな組織にもなれる万能性を示す画像のねつ造や遺伝子を解析した画像の改ざん」問題もそんなところが、見え隠れしている感じがする。
理研の野依理事長の「研究者は全面的に責任を負わねばならない」という発言も、竹市雅俊 発生・再生科学総合研究センター長も、論文共著者である笹井芳樹 副センター長も、理研の「研究論文の疑義に関する調査委員会」委員 石井俊輔氏の発言を聞いても他人事のように聞こえる。責任の転嫁のようだ。
そして、全責任を30歳の小保方晴子女史に押し付けているようだ。
iPS細胞の発見でノーベル賞を授賞された山中教授が、賞を授賞されたころ研究はチームでしたのだから功績は自分だけのものではない。自分は、研究に携わった人たちの代表者として賞を受けるにすぎない。との意を表明していたようだった。
栄光も失敗も研究したチームが受けるものだろう。確かに代表者としての責任は重いが、なにもかもひとりでしたわけでもないだろうし、発表される以前には、時間があったに違いないから、もう一度各々で調べる時間はあったはずだ。言い訳は、いくらでもあろうが、この研究に係わった人たちは、あまりにも潔くない。
iPS細胞の発見の発表がノーベル賞を授賞したので焦ったのかも知れない。

以前にも、このブログで書いたことがあるが、私はiPS細胞の発見にしても、このSTAP細胞の発見にしても手放しで喜べないところがある。
もう、20年近く前のことだが、漫画家の本宮ひろ志氏と自分が受け持つ漫画雑誌の連載企画について相談をしたことがあった。相談の間で、突然本宮氏が、
「ねぇ、菊池さん!ぼくはね、そのうち人類が神の領域を侵すようになるんじゃないかと思うんだ。それは、とても心配なことだけど、それがどんなことなのか、どうなっちゃうか考えているんだよ」と言った。
「それやりましょうよ!」私も、本宮さんが想う「その世界」を観たくなったのだ。もちろん、そのときアニメの『新世紀 エヴァンゲリオン』は、もう世に出ていたのだが…
人間が神の領域まで入ってよいものだろうか?
生まれた赤子が障害を持っていたら直すのは大切なことだと思う。若者が、寝たきりになるような病気になったら治すべきだ。
しかし「神の領域」を考えず進むことが如何なものか、この小保方女史の問題で一度ゆっくり考えてみる必要があるような気がする。
女史を蜥蜴の尻尾にしてはならない。