古き良き時代 | honya.jp

閉門即是深山 104

古き良き時代

突然爺むさいタイトルを付けてしまった。

ただ、読者の皆様には断っておくが、今書いている原稿は、新しく社主が買ってくれて、I君が多忙の合間をぬって、家に帰れる時間を割いて、設定してくれたパソコンを使っている。「お初」である。今までのパソコンにも未練はある。寝食を共にしてきたからだとは、大げさすぎるが、10年近くも私の仕事を手伝ってくれたパソコン君である。流石に、さすがに、精密機械の寿命は短いようで3,4年前から、いつ壊れるか心配であった。最近では、よくかたまり、検索にも時間がかかり、他のホームページを印刷出来なくなっていた。新機種は、やはり調子が良い。気分も良い。
このブログを借りて、旧機種のパソコン君と社主とI君に謹んで御礼申し上げる。

新しいパソコンに向かって座ったけれどタイトルだけが浮かんだので書いたが、中身に関しては何も想い浮かばない。ブログやエッセイが自然に書ける機種は、いつ頃出来るのかしらんと思うのである。
さて、厚く御礼したところで書きださねばならない。なにせ、このブログは、毎週金曜日にきまってアップされるのだから悠長に構えられないし、締め切りギリギリだと自分が困るだけだから、何か書きださねばならない。
しかし、シルバー・ウィークなど訳も判からぬ大型の連休のおかげで、頭も身体も錆び付いてしまった。シルバー・ウィークは、いつ、誰が創ったのだろうか?もし、シルバーが我ら老人の意味だとすれば、こんな週を創らなくても、老人は、いつも連休のようなものだ。いや、シルバーと名付けて若者たちが連休を楽しんでくれれば、少しはお役にたったのかも知れないが。

その連休のど真ん中に結婚式があった。官能小説家の丸茂ジュン氏と漫画原作者牛次郎氏の間に出来た亜人夢(アトム)君という好青年が、結婚したのだ。New奥方、新婦とは、アニメや漫画で趣味が一致したという。なかなか素敵なカップルの誕生だった。しかし、不思議なもので結婚式は、今も昔もかわらない。いろいろ工夫した結果、いろいろ機械を使った結果、また我々の時代に戻ってきたような気がする。
新郎は、初めて着るようなタキシードを身に付け、新婦は、真っ白なウエディングドレスを着、指輪の交換をする。「はい、ここでキスのタイムです」司会が言うと機械仕掛けの人形のように二人は、抱き合う。流石に昔は、これは無かった。日本では人前で、キスなどする習慣が無かった。結構家や隠れてキスをしているくせに「人前では憚る」ところがあった。
現在は、改札前で別れを惜しむ抱き合いのキスは、しばしば見ることがある。また、真昼間エスカレータや通行人の多い路などの抱擁も見られる。厭では無いが、おいおい、ちょっと待てないのかねぇ、と時代への嫉妬も感じることがある。

さて、今年のファッションのベースが英国調になると何かに書いてあった。確かに中折れ帽が流行り、イギリスのハリス・ツイードという生地屋さんのジャケットやコート、また昔は、その店で出していなかったような、ポシェットやバッグまで人気が集まっている。私は、この生地のジャケットをイギリスで買ってきて着ていたこともあるし、コートも持っている。きっと今の若者には、新鮮に見えるのだろう。が、私には、ダサイ田舎者のイメージが付きまとう。そう言えば、この夏、女性の間でレース地のワンピースやカットソーが流行ったようだ。これなんかも英国調の秋の流行りの前触れかも知れない。流行は、繰り返すのだろう。ダサいと思っていたものが、急に新鮮なものに早変わったりする。

私は、ときどき講演に駆り出されることがあるが、小さな講演会場の場合など、中折れ帽子などかぶり、大正や昭和の初期に流行った丸眼鏡などかけて、口ひげを貼って、爺さんの菊池寛の話や、芥川龍之介や直木三十五の裏話などすると、会場が沸いてくれる。

私が、若い自分にロックが流行り、私もバンドを結成し、アルバイト代を稼いでいたが、その頃の曲を、今のコンビニやスーパー、そして服飾店などで聞くことがある。いきつく処まで行った音楽が戻ってきたようだ。そこで、50年ぶりにバンドを再結成した。そして、元のバンド名に「NEO」を付けた。新世紀の意味である。映画の予告篇を見ると暮れあたりから、007やスターウォーズが始まる。現在は、再生の時代かも知れない。仕事上、悩んだら、昔を思い出すのも手かも知れない。又吉直樹さんや羽田圭介さんの芥川賞受賞作を読むと何か昔の小説を読んでいるような気がするが…。

さて、この原稿を書いた後、私は、直木賞の直木三十五氏の甥ごさんと飯を喰う約束をしている。10月24日栃木県大田原市で、『宮本武蔵』や『鳴門秘帖』の著者吉川英治氏の長男吉川英明さんと三人で講演座談会をすることになっている。会場は、那須野が原ハーモニーホールで、12時30分開場と聞く。
日にちが迫ってきて、なにか心細くなってきたのかも知れない。直木氏の甥の植村鞆音さんには、普通に居酒屋で三人で飲んでいるようにやろうよ、と今夜会ったときに話そうと思っている。どうせ、司会者がどう振ってくるか我々には、判らないのだから準備もヘチマもないのだ…。
出たとこ勝負の方が臨場感があって、来てくださる殊勝なお客様に喜んで頂ける気がする。いつもそうだ!私は、好い加減、適当を自認している。