医療を考えるとき、人類の本当の幸せを! | honya.jp

閉門即是深山 16

医療を考えるとき、人類の本当の幸せを!

皆さま、明けましておめでとうございます!読者の皆さまにとって2014年、本年も良い年であられますように!

さて、昨年暮れにこのブログで書きましたが、角川書店から出版されたダン・ブラウンの近刊『インフェルノ上・下』(越前敏弥氏 訳)についての話しをしましょう。

ダン・ブラウンという著者名は、お忘れになった方も多いかと思いますが、2003年3月に『ダ・ヴィンチ・コード』が刊行され、映画にもなりました。この小説の主人公は、ロバート・ラングドン、ハーヴァード大学の宗教象徴学の専門の教授です。映画では、昨年暮れに上映していましたが、「キャプテン・フィリップス」のキャプテンを演じた名優・トム・ハンクスが、ラングドン教授を演じていました。
このラングドン教授のシリーズの第1作目は、2000年に刊行された『天使と悪魔』です。これも映画化されました。こう聴けば、あぁ、あのダン・ブラウンかと思い出される方もいらっしゃると思います。

ダン・ブラウンは、1964年アメリカのニューハンプシャー州で生まれ、英語教師から作家に転身したそうです。父は数学者で、母親は、宗教音楽家。そして、奥さんが、美術史研究者で画家のようです。
この父、母、妻の3人を合わせたようなひとが、ダン・ブラウンが主人公としたラングドン教授なのですね。ブラウンの著書には『デセプション・ポイント』や『パズル・パレス』、『ロスト・シンボル』など傑作が多く、『ロスト・シンボル』も映画化されたので、観た方も多いと思います。
近作『インフェルノ』(上下巻)の主人公もラングドン教授が主人公です。どの作品もキリスト教にまつわる象徴が謎解きの鍵になり、エンターテイメントされたハードボイルド、追いかけごっこのシーンがありワクワク・ドキドキさせてくれます。『インフェルノ』を直訳すると「地獄」でしょうか?

今回、私が長々とこの作品に固執するのは、ダン・ブラウンの作品が好きだからというばかりではありません。この話しのテーマ、内容の深層が、私の医療に関する疑問や悩み、また考えに酷似しているからです。本の内容に振れ過ぎると、著作権問題にも触れますし、角川書店からも怒られますから、気をつけながら書いていきます。

本の帯の表には、
“この場所で、この日に、世界は永遠に変わった”人口爆発による滅亡と崩壊。世界と人類を、救え───。
「ねむれないほど面白い、世界1100万人が熱狂!」と、書かれています。
帯の裏には、
生化学者がこの世に遺した、遺伝子操作によるおぞましき野望。〈地獄インフェルノ〉が出現する前に、世界流行の爆心地を探し出せ!
仕組まれた世界の破滅、次々現れる追っ手をかわし、ラングドンは巨大な野望を食い止められるのか!?
と、あります。

次に表紙のカバーの袖にある文章をご紹介しましょう! 帯や表紙は、本を売るための紹介文章ですから、まぁ、角川書店もここまでは、許してくれるでしょう!
医師シエナとともに、ヴェッキオ宮殿に向かったラングドンは、監視カメラにダンテのデスマスクを盗み出す自分の姿を見いだし、驚愕する。昨夜はいったい、何をしでかしたのだ?マスクの所有者であるスイスの大富豪ベルトラン・ゾブリストには、壮大な野望があった。生殖細胞操作の分野を一から築いたゾブリストは、人類が人口爆発のせいで滅亡するという説を唱え、黒死病に着想を得た過激な方程式を提唱し、危険視されていた。デスマスクに残されたメッセージ、仕組まれた世界の破滅。ラングドンは医師シエナとともに、ヴェネツィアに飛ぶ。次々現れる追っ手をかわし、巨大な野望を食い止められるのか──!? と、あります。

犯人に、「人類が人口爆発のせいで滅亡する」といわせているのは、著者ダン・ブラウンなのです。この100年の世界の人口の増加、これは、本文中に数字も入れて詳しく書かれています。私は、人口爆発とか、遺伝子操作とか、また、生殖細胞操作とかでただちに、人類が滅亡するとは、思っていません。これは、小説で、小説は、極端な例で創作されるものです。

が、日本の平均寿命が世界最高になり85歳くらいになっています。子供は、世界でどんどん産まれています。人は、医療の進化で長寿になり、子供は、必要ですから、どんどんと産まれてくる。「人類が人口爆発のせいで滅亡する」という小説中の仮のテーゼの前に、これで「人間は、幸福なのだろうか?」と私は、思うのです。医者は、懸命な努力によって医療を進化させる。そして、人類は、長生できるようになる。しかし、老人の顔は、幸せそうに見えない。子供達にその付けが廻ってくる。それが、幸せなのだろうか?そして、ダン・ブラウンの小説のように「人口爆発によって人類が滅亡」したら?

本を読むのが面倒な方は、この『インフェルノ』は、2015年、来年に映画化が決定されたようです。これも帯に書いてありました。
昨年暮れに、この本を持って病院に薬をもらいに行きました。それを見た私の担当医が、私もダン・ブラウンの作品が好きなんですよ!といいます。私は、この作品は、是非、お医者様たちにも読んでもらいたいんです!と告げました。