菊池寛 異色の怪奇小説 夕刊大阪新聞で連載 高松に直筆原稿| 閉門即是深山(菊池夏樹) | honya.jp

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「菊池寛 異色の怪奇小説 夕刊大阪新聞で連載 高松に直筆原稿」

少々長いタイトルであるが、まず産経新聞の見出しで、7月14日掲載された記事のタイトルを利用した。

この新発見された祖父・菊池寛の原稿は昭和6年ごろ『夕刊大阪新聞』で連載していた怪奇小説『妖妻記』で、この夕刊大阪新聞は、その後、産経新聞の前身である日本工業新聞が吸収したわけだから、現在の産経新聞関連に掲載した幻の小説と言ってもいい。東京の産経14日の朝刊には「菊池寛 幻の怪奇小説 直筆原稿夕刊大阪新聞で連載」とある。13日から14日にかけて、似たようなタイトルが新聞各紙に踊った。

讀賣新聞は、13日「菊池寛 幻の怪奇小説」、14日には「菊池寛 未知の怪奇小説 自筆原稿発見 新たな作風「相当面白いつもり」」と2日にわたって発表、朝日新聞は、全国版で「菊池寛 幻の自筆原稿  怪奇小説 新たな作風に挑戦?」と書き、香川版には「菊池寛 挑んだ怪奇小説 高松市が自筆原稿発見」とある。東京新聞には「菊池寛 幻の怪奇小説─「妖妻記」原稿発見」、毎日新聞は東京では「菊池寛の怪奇小説発見 全集未収録「相当面白いつもり」、地方では「菊池寛自賛 怪奇小説発見 新風一新「相当面白いつもり」」と書かれている。日経新聞までが「菊池寛「幻の作品」発見 怪奇小説「妖妻記」の自筆原稿」と書いてくれたし、祖父の故郷近くの徳島新聞では14日版に「菊池寛 幻の怪奇小説発見 マンネリ打破の実験作 高松市 自筆原稿きょうから公開」とある。公開は、高松市昭和町高松市菊池寛記念館。地元の四国新聞は社会面で「「相当面白い」と自賛 現実主義者、作風一新 専門家「新境地を模索」」、総合面では「菊池寛 幻の怪奇小説 原稿64枚発見 昭和初期、大阪の夕刊紙連載」と詳しい。

どの新聞にも、現在菊池寛研究の第一人者である青山学院大学文学部片山宏行教授のコメントが掲載されていた。
「現実主義・合理主義者を看板とした流行作家菊池寛のイメージを一転させる新境地の作品と評価します。この作品が書かれた頃、菊池はすでに『真珠夫人』(大正9年)で成功を収め、人気作家の中心的存在になっていましたが、大衆文学の開拓は常に菊池の念頭にあったと思われます。」と書かれている。

 「妖妻記」 作・菊池 寛  挿絵・金森観陽
   作者の言葉
 これは、「大衆文藝」とは、少し違つてゐるかも知れない。歴史小説でもなく、チャンバラものでない、怪奇談です。長いものではありませんが相当面白いつもりです。回数は二三十回です。
   妖妻奇談  一            菊池寛
 この話は、大正七八年頃、僕が伊加保温泉に滞在中湯番の老人から聞いた話である。